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研究内容

記憶・学習を支えるシナプス可塑性の分子機構の解明と制御方法の開発

背景

 脳は多数の神経細胞が複雑なネットワークを形成して、互いに情報を伝達し合うことにより複雑な機能を果たしています。神経細胞は他の細胞から情報を受け取る樹状突起と他の細胞に情報を伝える軸索という機能的に異なる2つの領域を持つ細胞です。一つの神経細胞の軸索は他の神経細胞の樹状突起に入力してシナプスと呼ばれる構造を作っています。このシナプスこそが神経細胞間の情報伝達の場となっています。脊椎動物の中枢神経系における興奮性のシナプス伝達は主にグルタミン酸とAMPA型グルタミン酸受容体によって担われています。シナプスにおいて軸索末端からグルタミン酸が放出されると樹状突起に存在するAMPA型グルタミン酸受容体に結合し、この受容体チャネルが開いて細胞内にNa+イオンが流入することで情報が伝えられています。

 興味深いことにこのシナプスでの情報伝達効率は様々な刺激によって変化することが知られています。この現象はシナプス可塑性と呼ばれており、記憶・学習といった脳機能を支える細胞レベルの基盤と考えられています。当研究室ではこのシナプス可塑性の分子機構を解明しその制御法を開発することを目的として研究を行っております。

研究内容

 近年シナプス可塑性の分子実体が、シナプスに存在するAMPA型グルタミン酸受容体の数の変化であることが明らかにされてきています。私どもはこれまでにAMPA受容体に強固に結合するTARPと呼ばれるタンパク質が、そのリン酸化状態に依存してAP-2, AP-3といったタンパク質輸送を制御する分子と結合してAMPA受容体の細胞内輸送を制御することでシナプス可塑性を引き起こしていることを明らかにしてきました。現在は様々なTARPに結合するタンパク質がシナプス可塑性の誘導にどのような影響を与えているかを解析しています。

 さらに、シナプス可塑性を人為的に光で制御する方法の開発に着手しています。シナプス可塑性の1つである長期抑圧は細胞表面のAMPA型グルタミン酸受容体がエンドサイトーシスという現象により細胞内に取り込まれることで、情報伝達に関与する受容体の数が減少することで引き起こされることが知られています。このAMPA受容体のエンドサイトーシスを光により制御する方法の開発を行っており、今後の個体レベルの記憶・学習を制御する技術の開発につなげて参ります。

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